🔥【2019年6月】米中摩擦は九州経済にどう影響する?地方銀行トップが語るサプライチェーンの課題と地方創生への新たな役割

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

2019年6月3日時点の経済環境を考えるとき、米中貿易摩擦の激化をはじめとする国際情勢の変化は、日本の地方経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。全国地方銀行協会の柴戸隆成会長(福岡銀行頭取を兼務)に、この重要なテーマについてお話を伺いました。地域経済の「今」と、地方銀行が果たすべき新たな役割について、分かりやすく掘り下げてまいります。

これまでの地方経済は、長期間にわたり緩やかな景気回復が続いてきました。アベノミクスによる金融政策や経済対策の恩恵は地方にも及び、特に雇用と所得の改善によって個人消費が増加し、設備投資の拡大などの内需が景気の土台を支えてきたといえるでしょう。また、株価の上昇も景況感を押し上げるプラス要因として作用しています。企業の倒産件数も以前と比較して低い水準にあり、地方銀行にとっても、貸倒れに備えるための引当金の積み増しといった信用コストが抑えられてきました。この安定した状況が地方経済の大きな特徴だったのです。

半導体・電子部品の減速とアジア拠点化の光

しかし、足元では景気変調の兆しが見え始めています。特に九州地方は、輸出動向が経済に与える影響が極めて大きい地域です。中国経済の減速が響き、スマートフォン市場の成長が鈍化しているため、それに伴い半導体や電子部品といった高成長が期待されてきた分野の生産と輸出が伸び悩む状況に直面しています。これは、九州の主要産業が中国をはじめとするアジア圏のサプライチェーン(部品の調達から完成品の提供までの一連の流れ、供給網のこと)に深く組み込まれているためです。

一方で、九州経済には明るい材料も存在しています。地理的にアジアに近接しているという有利な立地環境を活かし、化粧品や日用品を製造するメーカーが、九州をアジア市場向けの生産拠点として捉え、工場建設を進める動きが見られるのです。これは、地政学的な優位性を活かした地域経済の多角化のチャンスでもあり、今後の成長に期待が高まるところでしょう。

肝心の米中貿易摩擦の影響については、現時点では「まだそう大きくはない」というのが会長の見解です。しかし、輸出主導型で中国と密接にサプライチェーンで結びついている九州経済にとって、両大国の軋轢は当然ながら望ましい事態ではありません。交渉の行方は予断を許さない状況であり、地方銀行協会としてもその動向を慎重に注視し続けている状況です。

さらに、経済の下振れリスクは米中問題だけにとどまりません。英国のEU離脱問題(ブレグジット)や、米国とイランの間の緊張、北朝鮮の核問題など、国際情勢には多くの不安定要素が内在しています。景気は企業の心理に大きく影響を受けるため、多くの企業が将来の不確実性を懸念し、様子見の姿勢を強めている可能性が高いでしょう。

インバウンドの質の向上と地銀の新しい役割

地域のもう一つの重要項目であるインバウンド(訪日外国人観光客)の動向についてですが、2018年は中国からの訪問客が減少したものの、韓国からの訪問客が大きく伸びた結果、全体では7年連続の増加を達成しました。増加の勢いは以前の過熱気味な状態から落ち着きを見せていますが、これはむしろ健全なペースへと移行しつつあると評価すべきでしょう。九州各県の空港と東アジア各国を結ぶ格安航空会社(LCC)の就航が継続しており、今後も緩やかに訪日外国人の数は増え続ける見込みです。

しかし、九州への訪日客の大部分をアジアからの観光客が占めているという偏りが、現在の大きな課題です。同年9月に開催されるラグビーワールドカップ(W杯)日本大会は、福岡、熊本、大分といった九州の都市でも試合が行われます。地方銀行としても、このような国際的なイベントを絶好の機会と捉え、九州の魅力を世界に発信することで、これまで誘致が難しかった欧米やオーストラリアからの新たな需要を取り込むことを目指していくべきでしょう。これは、観光客の質の向上と客層の多様化を促進する重要な戦略になります。

一方で、長引くマイナス金利政策は、地方銀行の基礎的な収益力を低下させています。しかし、全体として見れば、地方銀行は当期利益や純資産を相応に有しており、経営基盤は確立されているとの認識です。現在、企業はかつてほど資金繰りに苦労しておらず、銀行に対する融資(ローン)の需要は以前ほど大きくありません。この変化は、地域が銀行に求めるものが資金提供一辺倒ではなくなっていることを示唆しているでしょう。

現代の地方銀行には、地方創生(地方の活性化)という観点から、取引先の企業や自治体へ人材を派遣して経営改善や地域課題の解決を支援するなど、金融を超えたコンサルティング機能の発揮が強く求められています。地方銀行の役割は、単なる金銭の貸し借りを超えて、地域の課題を解決し、持続可能な成長を支えるためのソリューション提供者へと進化しているのです。地方銀行がこの新たなニーズに応えることこそが、現在の地方創生時代における最大の使命だと私は考えます。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

SNSでもご購読できます。

コメントを残す

*